エタノール燃料はエネルギーを無駄にしているか?: 手づくり企画「ジャーニー・トゥ・フォーエバー」



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〒622-0291京都府船井郡
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エタノール燃料はエネルギーを無駄にしているか?

いわゆる環境活動家の人たちがしばしば問題にすることにエタノール燃料の「ネット・エネルギー」がある。エタノール燃料が発揮するエネルギー量より、原料の作物を栽培したりエタノールを蒸留したりするために消費するエネルギー量の方が多いのではないかということ。

米国農務省は数々の調査に基づきトウモロコシを栽培しエタノールを蒸留するために使われたエネルギー量よりエタノール燃料の方が34%大きなエネルギー量を発揮できると結論づけている。
Estimating the Net Energy Balance of Corn Ethanol」by Hosein Shapouri et al., US Department of Agriculture, Economic Research Service, Office of Energy and New Uses, Agricultural Economic Report No. 721, July 1995

「1970年代から行われた数々の調査結果にはバラツキも見られたが、全体を統合した結果、トウモロコシ原料のエタノールは1.24の比率で効率的なエネルギー源だということが明らかになった」
http://www.ethanol-gec.org/corn_eth.htm

アメリカの「Institute for Local Self-Reliance(地域社会自立のための研究所)」が行った調査「How Much Energy Does It Take to Make a Gallon of Ethanol?」(David Lorenz and David Morris著)は「最良の農業技術と燃料製造技術を使えば、エタノール燃料は原料のトウモロコシを栽培し燃料を生産するために消費するエネルギー量の2倍以上のエネルギーを生み出すことができる」と述べている。1992年、同研究所は実際にトウモロコシの生産者が消費しているエネルギー量やエタノール製造工場で消費されるエネルギー量を測定し、エタノール燃料が「ネット・エネルギー」ポジティブ、つまり生産過程で消費するエネルギー量より大きなエネルギー量を生み出す燃料だということを証明した。新しい報告書はさらにポジティブな数値を示している。トウモロコシを栽培しエタノールを生産するまでに使われたエネルギー量より、エタノール燃料はずっと大きなエネルギーを供給することができ、同時に価値ある副産物も提供する。
http://www.carbohydrateeconomy.org/ceic/library/admin/uploadedfiles/
How_Much_Energy_Does_it_Take_to_Make_a_Gallon_.html


「エタノールの生産工程は非常にエネルギー的に効率よい。エタノールのエネルギーバランスは125%で、ガソリンの85%よりずっと大きい。エタノール燃料の製造工程は運輸機関のための液体燃料を作るもっとも効率的な方法だ。農務省によると1BTU (エネルギーの単位:British Thermal Unit) のエネルギーを出力するガソリンを製造するために必要な量のエネルギーを使えば、8BTUのエネルギーを出力するエタノール燃料を生産することができる」
American Coalition for Ethanol (エタノールのためのアメリカ連合: ACE)
http://www.ethanol.org/ethanol_info.html


どちらにしても、これは机上の議論でしかない。その時々の天候や作物の様子によって変わる農作業に「標準的な」生産工程なんてあまり意味がない。仮に標準的な農作業の効率性を計算できたとしても、こんな場合はどうする?「ある自給自足的な生活を営む農家が、薪にするしか用途のない木材を大量に持っており、近くのパン工場から大量の期限切れケーキをもらってきた。このケーキは農家が引き取らなければ廃棄され税金とエネルギーを費やして処分されるところだったもの」このケーキを発酵させ、薪を燃やしてエタノール燃料を蒸留すれば、無駄な廃棄物を有益なエネルギー源に転換することができる(これは実際あったケース)。だけどこのようなケース・バイ・ケースの要素はネット・エネルギーの生産性を議論するときに計算に含まれない。今は費用をかけて処分されているけれどエタノールの原料として充分役立つ「廃棄物」はあちこちにたくさんあるはずだ。

こんなケースもある。「ブラジルで1日30万リッターのエタノール燃料を蒸留する工場を建設する代わりに、1,500ヘクタールの農場で小さな農民が栽培したサトウキビとモロコシを1日2万リッターずつ燃料にした。エタノール蒸留場の近くで絞りかすを家畜の餌にし、家畜の糞尿と有機物残さからバイオガスを作った。このバイオガスはエタノール燃料を蒸留する熱源に使い、残りから発電し地域に電力を提供するのに充分な量だった」

エネルギーの効率性を考えるとき、自分が今いる地域レベルから考え、そこで栽培されている作物や捨てられている有機廃棄物などの原料を見つけだし、蒸留のための熱源も地域の中で無駄になっているものを探し、こうやって作った燃料をどのように使うかを考えると、今までとはまったく違った世界が見えてくる。地域レベルにおけるエネルギーの効率性を考えるとき、一般化した「この燃料 vs あの燃料」議論はあまり意味がない。

もう一つ別の考え方もある。Offgrid-Online(April 5, 2000) より。
http://www.offgridknowhow.com/
「生産工程で消費したエネルギー量より大きなエネルギー量を引き出せるか否か? それが致命的な問題だろうか。一般的には、発揮できるエネルギー量より、製造過程で消費されるエネルギー量の方が大きいことは燃料としての意味をなさないことが多い。でも車を走らせるために「ポータブル」な燃料が欲しいとき、動かせない燃料源を多めに消費して動かせる燃料源を作り出すことは無意味なことではない。たとえば薪を燃やしてアルコール燃料を蒸留する場合、薪は車の内燃機関には使えないし持ち運びも不便な燃料。この薪を2 BTU使い、1 BTUのエネルギーを発揮するアルコール燃料を作ったら? 他に使い道がない薪が充分あり、ガソリンの値段が高騰し続けたら、薪を燃やしてアルコール燃料を作ることにも意味がある」
http://www.homesteadtechnology.com/newsletters/20000405.txt

米国のシエラ・クラブはまた別の意味でエタノール燃料に反対している。シエラ・クラブはトウモロコシを栽培するために大量に使われる窒素肥料が窒素過多の問題を引き起こしていることを理由にエタノール燃料をあまり好ましく思っていない。でも、これは作物を工業的に大量生産する近代農業への反対であって、エタノール燃料そのものの問題ではない。もっと好ましい栽培システムを使えば、収穫量も落とさず窒素肥料などまったく必要ない生産ができる。

なにより大切なのは、エタノール燃料がガソリンよりずっと害が少ない燃料であり、有毒排ガスの排出を減らし、そして植物を原料とする再生可能なエネルギー源であり、化石燃料のように精製時や燃料時に地球温暖化ガスを一方的に増加させないこと。

エタノールはバイオディーゼル燃料を作るうえでも大切な役割がある。エタノールをアルコールとして作ったエチル・エステルのバイオディーゼル燃料は、メタノールを使って作ったバイオディーゼル燃料(メチル・エステル)よりずっときれいで合理的なもの。エタノールはメタノールの様に有毒ではないし、なにより小さな農民が簡単な器具を使って自分で蒸留できることが魅力的だ。


手づくり企画の「バイオ燃料メーリングリスト(biofueljp)」

日本語のメーリングリストを始めました。
英語で2000年から開設されていたジャーニー・トゥ・フォーエバーの「バイオ燃料メーリングリスト」および「バイオ燃料ビジネスメーリングリスト」では、世界中から参加した2,000人以上の草の根バイオディーゼラーや専門家、学識者、企業家たちが、誰もがどこでも特別な機械がなくてもバイオ燃料を手づくりできる方法を一緒に開発してきました。日本でも草の根バイオ燃料を広めるために、日本語で情報交換や燃料づくりの協力ができるディスカッションの場を設置しました。ぜひご参加ください。
リストURL:http://www.egroups.co.jp/group/biofueljp

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