Foolproof写真
参考までにアレックスは小さなガラス瓶でバイオディーゼルを作り写真を送ってくれた。1つは使い倒された廃食油と脂肪、もう1つは100%脂肪。

1. 脂肪3割、廃食油7割の原料。水分を蒸発して除いた後に脂肪の固まりが残っている。

2. 脂肪と廃食油を溶かした後。

3. メタノールを加えた後。曇った色合いに注目。

4. 第1段階「酸」が終わったところ。色が濃くなっている。

5. 脂肪100%の固まりを溶かしたところ。

6. メタノールを加えた後。脂肪が乳化したように見えるけど、これも1つの過程だから心配しない。

7. 第1段階で取り除かれたグリセリン。

8. 第2段階が終わったエステル。

9. 第2段階で取り除かれたグリセリン。



<新しいページ紹介>
●次回の「手づくりバイオディーゼル燃料セミナー」を11月30日(日曜日)に予定しています。参加者募集中! 詳しくはこちら。

●日本各地の取り組みをまとめた「バイオディーゼル日本地図」をアップしました。

バイオ燃料

バイオディーゼル燃料

自分で作ってみよう! 
バイオディーゼル燃料の作り方

マイクの「1段階 アルカリ方式」
アレックスの「2段階 アルカリ-アルカリ方式」
アレックスの「2段階 酸-アルカリ『Foolproof』方式

燃料製造器も自分で作る!
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手づくりバイオディーゼル燃料の作り方
アレックス・カックの「2段階 酸-アルカリ『Foolproof』方式」

世界中で大勢の素人バイオディーゼラーたちがこの2段階 酸-アルカリ『Foolproof』方式を定番とし、ピンからキリまでいろんな廃食油を高品質のバイオディーゼル燃料に作り替えてバイオ運転を楽しんでいる。

このレセピで手づくりされたバイオディーゼル燃料を専門機関が分析した結果、ドイツの品質基準であるDIN 51606に2回合格している。つまり横着せずレセピ通りに作れば、DIN基準やアメリカのASTM基準に適合するバイオディーゼル燃料を作ることができるということ。バイオディーゼル燃料の品質基準も参照。
アレックス・カック著

遊離脂肪酸からエステルへの変換



注意! 2段階方式は上級の作り方のため初心者向けではありません。まずは基本の作り方『アルカリ1段階方式』から始め、基礎をしっかり固めてください。入門は初めの第一歩から。


これから紹介するのは失敗なく(foolproof)バイオディーゼル燃料を作る方法。滴定も特別な機材も必要ない。温度計があれば便利だけど、pHメーターはなくてもOK!

この作り方は2段階に分かれている。まず酸による第1段階、それからアルカリによる第2段階。浮遊脂肪酸を大量に含む使い倒された廃食用油からのバイオ燃料づくり向けに開発されたレセピだけど、あらゆる植物性・動物性の廃食用油を高品質のバイオディーゼル燃料に作り替えることができる。しかも2段階に分けることによって、燃料の生産率がずっと効率よくなっている。いまでは世界中の草の根バイオディーゼラーたちの教科書となったアレックスのレセピを日本で初めてご紹介!

はじめに

植物性でも動物性でも、廃食用油からバイオディーゼル燃料を効率的に作ろうとするとき、最大の課題は石けんの形成を防ぐこと。石けんは苛性ソーダなどのアルカリ触媒によるエステル交換の化学反応のときに、ナトリウム・イオンが廃食油に(ときにはバージンの油にも)含まれる遊離脂肪酸と結びつくことでできてしまう。石けんはメチル・エステル(つまりバイオディーゼル)を水分に取り込んでしまう困り者。水とくっついたエステルは洗浄の段階で洗い流されてしまい、しかもバイオディーゼル燃料と水の分離が難しくなるので、燃料の生産量がグッと減り、洗浄に必要な水の量はグッと増えてしまう。この2段階方式は、先に遊離脂肪酸をやっつけてしまおうというもの。

ボクは試しに使い倒された廃食用油を半分と豚のラードを半分まぜた油から、この作り方でバイオディーゼルを作ってみた。結果は、石けんが見あたらない超きれいなバイオディーゼル燃料のできあがり! まるでバージンの植物油から作られたバイオディーゼルみたいに見た目も匂いもきれいなバイオディーゼルができた。


アパートの一室でバイオディーゼル燃料を作っているアレックス(写真後ろ)
仕組みは簡単。第1段階はいつものエステル「交換」ではなく、単純な「エステル化」。エステル化の後にエステル交換も始まるけれど、酸を触媒にしたときはアルカリ触媒のときより反応速度がずっと遅く、より過敏に「均衡」の影響を受けるため油からメチルエステルへの変換もかなり未完成の段階で止まってしまう。反応を押し進めるためにメタノールを増やすと、増やした分のメタノールを回収しないとバイオ燃料づくりのコストが跳ね上がってしまう。余分のメタノールを回収しても、それでも割高に。そこで、第2段階「アルカリ」の出番。

第1段階ではまず酸とアルコールの化合物を作る。アルコールとしては同じみのメタノールを使うけれど、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)などのアルカリ触媒の代わりにここでは硫酸を触媒として使う。硫酸とは自動車のバッテリーに使われたりしている酸で、地球上のあちこちでよく使われる酸の一つ。バッテリーに使われているのは50%くらいの薄いものだけど、このバイオ燃料づくりには少なくとも純度95%の硫酸を使うこと。98%以上のより純粋な硫酸は値段が張るけれど、ここに紹介している作り方どおりに注意深く作れば95%の硫酸で充分。残念ながら他の酸では代用できない。必ず「硫酸」を使うこと。第2段階ではいつもどおりの苛性ソーダや苛性カリを使うけれど、使う量は基本の作り方に比べると半分くらいに押さえられる。

硫酸に含まれる硫黄イオンは第2段階でアルカリ触媒のナトリウムイオンに結びつき、硫酸ナトリウムとなる。硫酸ナトリウムは水溶性なので、燃料を洗う段階で水に洗い流されるため、完成品のバイオディーゼル燃料には硫酸の硫黄分は残らない。

バイオ燃料づくりの道具

2段階方式だからといって特別な反応装置は必要ない。一般的に、底から中身を抜き出す排水口があって、上はほぼ密閉にしっかりフタできる容器がベスト。大きくて平べったい形の容器より、細長くて背が高い容器の方がバイオディーゼル燃料づくりには向いている。攪拌のためには電気ドリルなどの回転モーターより、ポンプで循環させる方が望ましい。ポンプで反応槽の底近くから中身を吸い出し、容器の上から表面にバシャんと戻っていくよう設定する。35リットルくらいのプロセッサなら廃品の洗濯機から救出してきた100Wくらいのポンプを活用できる。同じ洗濯機から1.5kWくらいの電熱器も拾ってくればなおベター(表面がステンレスで覆われている電熱器を選ぶこと)(訳注:これはヨーロッパでの話。日本の洗濯機に同様のポンプや電熱器が備え付けられているかどうか不明)。温度調整のためにサーモスタットなどを使えたらそれはそれで便利だけど、そんな高価な物がなくても温度計を目で見て、必要に応じてヒーターのスイッチを手で入れれば充分。

硫酸を使うため、ふつうの鉄でできた容器や機材はそのうち浸食されて取り替えが必要になる。とはいうものの、よくある200Lドラム缶からプロセッサを作ることも充分可能。この方式で使う硫酸の量は割合として極わずかなもの。だから塗装されていないドラム缶でも、錆びて使い物にならなくなるまで1年以上はバイオ燃料づくりに活躍してもらうことができる。ボクはポリプロピレンの容器を使っている。摂氏100度強の温度に耐えられる物ならプラスチック容器でも大丈夫。ステンレスの容器を持っているのならそれはそれでラッキーだけど。プラスチック容器の場合は過熱源として電熱器とかが適していると思う。鉄製の容器なら最初は原料をガスなどの直火で温め、メタノールを加える前の段階で電熱器に切り替えると良い。

まずは練習

いつでも新しい作り方に挑戦するときは、まずは1リットルかそれ以下の少ない量で練習すること。いきなりプロの料理ができないのと同じで、バイオ燃料づくりもだれでもできるとはいえそれなりの練習と慣れは必要。いきなりドラム缶いっぱいの失敗作を作ってしまうのではなく、まずは台所のブレンダー(ミキサー)などで経験を積むこと。お手軽なミキサーを使う人が多いけれど、バイオ燃料づくりに使ったミキサーはその後は料理には使わないこと。

警告!!!

硫酸は危険な化学物質です。化学実験に適した防護眼鏡や防護手袋、防護服を装着し、充分な安全対策をとること。万が一の時のために流水を近くに用意しておき、蒸気も吸い込まない!

たとえ硫酸が足りなくなった場合でも、決して硝酸で量を補おうとしないこと。硫酸と硝酸が合わさるとニトログリセリンが形成される恐れがある。少量でも大変な爆発事故を引き起こしかねないので絶対しない。恐ろしい爆発物も参照して厳重警戒してください。

メタノールは飲み込まなくても皮膚から吸収され盲目や死をもたらす恐れがあります。水酸化ナトリウムは重度の火傷や死をもたらす恐れがあります。この2つの物質を混ぜたナトリウムメトキサイドは非常に腐食性のある強力なアルカリ物質です。万が一の時に薬品を洗い流すため流水を近くに用意しておくこと。作業場はしっかり換気し、小さな子供やペットを入れないこと。化学実験に適した防護眼鏡や防護手袋、防護服を装着し、蒸気を吸い込まないこと! 化学物質は適切に取り扱い、自己責任で作業を進めてください。安全なバイオ燃料づくりのためにも参照。

プロセス

手順1)いつも通り廃食用油を濾過し、食べカスや固形不純物を取り除く。

手順2)バイオディーゼル燃料づくりの成功の秘訣は化学反応のときに極力水分がない状態にすること。次の2つの方法で原料の廃食油から水分を取り除くことができる。

(a) 水分を油から分離して沈殿させる方法。この方が少ないエネルギーで水分を取り除くことができる。まず原料の廃食用油を摂氏60度に暖め、15分間その温度を保つ。これを沈殿させる容器に入れ少なくとも24時間静かな所において油と水を分離させる。その後に上澄みの油を取り出してバイオ燃料にするけれど、容器の底の方1割は水や不純物が沈んでいるので残しておく。

(b) 沸騰させて水分をとばす方法。高温にするためずっと多くのエネルギーが必要だし、それだけ厄介者の遊離脂肪酸を増やしてしまうため、あまり望ましくない方法。廃食油を摂氏100度まで加熱する。温度が上がるにつれ底に溜まってきた水は下から抜いて、水蒸気が突然はじけるのを防ぐこと。水蒸気のアワが出てこなくなるまで温度を保つ。

第1段階 〜酸

手順3)原料の廃食油・脂肪のリットル数を量る。

手順4)原料の油を摂氏35度まで温める。脂肪のかたまりも完全に溶かすこと。

手順5)メタノールを加える:メタノールは純度99%以上のものを使うこと。原料の油1リットルに対しメタノール0.08リットル(容量比8%)を量り取る。この量のメタノールを適温に温めた油に加える。

手順6)油とメタノールを5分間かき混ぜる。 メタノールは極性化合物で油は強い無極性物質なため濁った感じになる。

手順7)原料の油1リットルに対して、純度95%の硫酸(H2SO4)1ミリリットルを量り取る。目盛付きのピペットや注射器などを使って少しずつ硫酸を油とメタノールの混合物に加える。硫酸は取り扱いに要注意!!

手順8)油+メタノール+硫酸の混合物を温度を摂氏35度に保ったまま低い回転数で穏やかに攪拌する(飛び散らかさないこと!)。化学反応を進めるためにそれほど早い回転は必要ないし、飛び散った油その他は掃除が大変! なので攪拌のための回転数は500〜600 rpmを越えないこと。

手順9)温度を摂氏35度に保ったまま1時間攪拌する。1時間たったら過熱は止め、攪拌はそのまま続ける。

手順10)過熱を止めた後、そのままもう1時間攪拌を続ける。合計2時間してから攪拌を止め、油+メタノール+硫酸の混合物を少なくとも8時間(できれば一晩くらい)静置する。

メトキサイド楽勝法

苛性ソーダをメタノールに混ぜると発熱反応が起こる。つまり熱くなる。これは超アルカリの厄介者で、しかもなかなか溶けてはくれない。でもバイオ燃料づくりに使うためには、すべての苛性ソーダをカンペキに溶かしておく必要がある。世界中のバイオディーゼラーたちがいろんな工夫を寄せ合って、安全かつ簡単なメトキサイドの作り方を編み出した。この方法は楽勝だけど、唯一の欠点は時間がかかるので前もって準備しなくちゃいけないこと。でも、それは大したことじゃない。

メタノールや苛性ソーダ、ナトリウムメトキサイドを扱うときは安全対策に十分注意すること!

まずは厚くて丈夫な高密度ポリエチレン(High-density Polyethylene)でできた容器を準備する(国際的には「2」番のマークと「HDPE」という文字が印字してあるプラスチックだけど、日本では表示されていないことも多い)。ねじ込み式でしっかり栓できるフタが、できれば2口ついている物を探してくる。先にこの容器にメタノールを量って入れ、次に必要な分だけ量り取った苛性ソーダを入れる(この順序を逆にしないこと!) 苛性ソーダの量が多いときは一度に全量入れるのではなくて、間でフタを閉めては揺すりながら少しずつ加えた方が良い。苛性ソーダを全部入れ終わったらフタをしっかり閉め、容器ごと横向きに輪を描くように穏やかに揺すってかき混ぜる。こうやって2〜3分揺すったら、しばらく危なくない所に置いておく。思い出した頃にまた容器ごと揺すって、またしばらく置いておく。これを数時間おきに少なくとも4〜6回繰り返すと、24時間もたたないうちに苛性ソーダが完全に溶けたナトリウムメトキサイドができあがる(気温とかによってはもう少しかかることもあるかもしれないけれど)。

バイオ燃料づくりに使う苛性ソーダのメタノールに対する比率はそれほど大きくない。このFoolproof方式で作るときは特に。もし何らかの理由でもっと大量の苛性ソーダを溶かすときには、この楽勝法は使わないこと。
手順11) 油+メタノール+硫酸を寝かせている間にナトリウムメトキサイドを用意する。原料の油1リットルに対してメタノール0.12リットル(容量比12%)と水酸化ナトリウム3.1グラム(純度が不安な場合は3.5グラムを上限に)量り取る。メタノールに水酸化ナトリウムを加えて、完全に溶かしておく(右の楽勝法を参照)。

ナトリウムメトキサイドは非常に危険な化学物質です。メタノールやアルカリ触媒、メトキサイドを扱うときは化学実験に適した防護手袋、防護服、防護眼鏡を装着し、流水を近くに用意して充分注意して作業を進めてください。

注目:この段階までにエステル交換する脂肪は少なくなっているため、この作り方ではアルカリ触媒をふつうの半分くらいしか使わない。水酸化ナトリウムは純度99%以上の乾いたものを使うこと。空気に触れるとものすごい勢いで水分を吸収してしまうため、蓋を開けたらすぐさま閉めること。水酸化ナトリウムは素早く、でも正確に必要なグラム数を計量する。触媒が多すぎると後で燃料を洗うときに面倒なことになるから。

手順12)8時間、もしくは一晩寝かした後、用意したメトキサイドの半量を油+メタノール+硫酸に加えて室温のまま5分間攪拌する。こうすることによって硫酸を中和し、アルカリ触媒を使った化学反応に切り替える。原料が動物性の脂肪だった場合は翌朝には固体に戻っているだろうから、これは穏やかな温度で溶かしておく。

さてここから第2段階として、おなじみのアルカリ触媒でのバイオディーゼルづくりの手順を始める。

第2段階 〜アルカリ

ここからアルカリ触媒の出番。

手順13)手順12の混合物を摂氏55度に過熱し、化学反応が終わるまでこの温度を保つ。

手順14)用意しておいたナトリウムメトキサイドの残り半分を適温に温めた混合物に加えて攪拌する。攪拌のスピードは1段階と同じ500〜600 rpm以下の低い回転数で。

ナトリウムメトキサイドの取り扱いにはくれぐれも注意すること!

手順15)オプショナル(できれば):もしプロセッサの底に排出口が付いているようだったら、第2段階を始めて20〜25分後に底からグリセリンを排出し始めるとベター。ポンプで攪拌している場合の方が、これがやりやすい。グリセリンを落ち着かせるために、必要だったらポンプを1〜2分止めて流し出す。これを10分おきに繰り返す。このとき、グリセリンは熱い強力なアルカリ物質なので、取り扱いにはくれぐれも注意すること。排出したグリセリンなど副産物は手順18まで別においておく。

手順16)これは必須の手順:直径3cmくらいのガラス瓶に、一定の間隔でサンプルを取り出す。エステル部分が麦わら色の淡黄色になるまで注意深く監視を続ける。茶色くベトベトしたグリセリンなどはガラス瓶の底に溜まる。エステル部分が淡黄色になったら(ふつう1時間半から2時間半あと)、過熱も攪拌も止める。ガラスの小瓶にサンプルを取り出す代わりに、ポンプとプロセッサをつなぐ部分に編み目が入った透明ホースを使って色の変化を観察しても良い。

手順17)1時間、静かにおいて沈殿させる。

手順18)オプショナル(できれば):水洗浄を簡単にするために。グリセリンなど副産物を排出する。手順15でグリセリンを抜いた場合はその分も含めて全体量の25%を量り取り、そこに原料の油1リットルに対して10ミリリットルの純度10%の燐酸(H3PO4)を混ぜる。このときはプラスチックの容器で木のスプーンとかでかき混ぜる程度でOK。燐酸を加えたグリセリンなど副産物を反応槽に戻し、室温のまま20分ほど攪拌する。これを少なくとも6時間は静かに寝かせておき、その後でグリセリンなど副産物を完全に排出する。

これでおしまい! 第1段階(酸)で遊離脂肪酸がエステル化され、いくらかのトリグリセリドがエステル交換される。第2段階(アルカリ)はお馴染みのエステル交換だけど、ずっと早くずっとカンペキに化学反応を進めることができる。

燃料を洗う

手順19)できあがったバイオディーゼルを定番の泡洗浄で水洗いする。pHは気にしなくていい。10%の燐酸(H3PO4)をほんのわずか洗い水に加えておけばOK。エンジンの中でアルカリ触媒にウロウロされないよう、多めに入れても1ガロン(約4リットル)に燐酸10ミリリットルくらいで充分。

必要はないけれど、もし気になるのならリトマス紙とかでおおざっぱなpHを観察してもよい。最終的に洗い水は中性(pH7)かその近くで終わるはず。

手順20)洗い水には容量比でバイオディーゼルの3分の1の水を使う。室温でかまわないけど、バイオディーゼルも洗い水もだいたい同じ温度にすること。洗浄タンクにバイオディーゼルと洗い水を入れ、金魚用のエアーストーンを放り込み、エアーポンプのスイッチを入れる。少なくとも24時間ブクブクさせること。それからポンプを止めて30分ほどかけてバイオディーゼルと水を分離させる。下に不純物を溶かしこんで白くなった洗い水が溜まり、その上に少し色が明るくなったバイオディーゼルが浮いてくる。下から水を排出し、新しい水をつぎ足して、あと2回は同じ洗いを繰り返す。最後になるべく水を付けないようにバイオディーゼル燃料をタンクから流し出す。(泡洗浄のページも参照)

手順21)洗い終わったバイオディーゼルを3週間ほど静かに寝かしておき、綺麗に透き通ったところで車に給油する。サンプルを大きめのガラス瓶にとって窓際とかに置き、カンペキに透き通るまで毎日眺めるのも楽しいかも。(急ぐときはバイオディーゼルを摂氏45度まで温めて、それから静かに冷やす方法もある)

注意:バイオディーゼルを寝かしている間に、底の方に水が溜まるかもしれないけれど、これは燃料タンクに入り込ませないこと!

第1段階〜酸に関する質問

メタノールを油に加えて混ぜて、それから硫酸を油に加えて混ぜるより、先にメタノールと硫酸を混ぜ合わせてから一緒に油に入れてもいいんじゃないかと思うかもしれない。そうしない理由は二つ。(a)純度の高い硫酸とメタノールとを直接混ぜ合わすと、激しく反応して飛び散る恐れがあるから。レセピ通りにすればその問題はなくなる。(b) ジメチル・エーテルが形成される恐れがある。純度の高い硫酸をアルコールに加えるとアルコールを乾燥させる。それは構わないけれど、同時にメチル基を2個もつエーテルを作ることにもなる。これは困る。ジメチル・エーテルは無色のガスで非常に爆発性が強い。

第2段階〜アルカリに関する質問

第2段階ではバイオディーゼルがずいぶん濁っていて心配になるかもしれないけれど、これは洗い流されるから大丈夫。

バイオディーゼルが麦わら色の淡黄色になり、1時間ほど置いてグリセリンを取り出したとき(手順16)、だいたい原料の油1リットルに対して120ミリリットルのグリセリンができているはず。もしこの時グリセリンの量が100ミリリットルより少ない場合は、色は綺麗でもなにかがマズくて化学反応が充分行われていない証拠。

ほとんどの場合、原因はアルカリ触媒に使った苛性ソーダが古くて炭酸化されていたことが多い。苛性ソーダは空気中の二酸化炭素を取り込んで炭酸ナトリウムに変わってしまい、長持ちしない。新鮮な苛性ソーダはほとんど透き通った半透明だけれど、炭酸ナトリウムはもっと濃い白色。炭酸ナトリウムではエステル交換のジャマはしないけれど、ずっと大量の触媒が必要になってしまう。

そうなってしまった場合、手順13からのプロセスを繰り返す。原料の油1リットルに対して、メタノール0.03リットル、苛性ソーダ0.75グラムで新しくナトリウムメトキサイドを作り直す。バイオディーゼルのなりそこないを摂氏55度まで温め、新しく作ったメトキサイドを加えて同じように攪拌する。今回は途中でグリセリンを取り出す(手順15)心配はしないで、サンプルを取って色を調べる必要もない。ただ1時間攪拌し、静かに置いて分離させ、新たに沈んだグリセリンを排出して手順18に進む。

もったいないから炭酸ナトリウムに変わってしまった触媒を使いたい場合は、通常の必要量から25%多めに使うこと。でもできればそうなる前に、苛性ソーダは小さめの密閉容器で乾燥した室温の場所にきちんと保管しておく方が良い。

余分のメタノールを再利用する(オプショナル)

自家用のバイオ燃料づくりとはいえ、取り戻せるメタノールは再利用して燃料づくりのコストを引き下げたい。このためには主に熱で抽出する方法と、真空&熱で抽出する方法の2つがある。

熱で抽出する方法
第2段階を終えたバイオディーゼルを密閉した容器の中で摂氏70度に過熱し、そこから発生したメタノール蒸気を復水器(コンデンサー)に通す。メタノールは引火性があり、その蒸気は爆発性があるため、くれぐれも注意すること!バイオディーゼルに含まれるメタノールが少なくなるにつれ、温度をさらに上げて過熱する必要がある。

真空&熱で抽出する方法
基本的には熱だけで抽出するのと同じだけど、この方がエネルギーを削減できる。ただ真空を作り出す特別な容器や機材が必要になるけど。デールのプロセッサがこれの良い例。
http://home.swbell.net/scrof/Biod_Proc.html

でも初めから欲張らないこと。まずはプロセッサを用意してバイオディーゼルを何回も作り、燃料づくりに自信を持てるようになってからメタノールの再利用へ進む。一歩ずつ確実に。

少なくとも4分の1くらいのメタノールを回収することができる。つまり原料の油1リットルに対して50ミリリットル強のメタノールを節約できるということ。再利用するメタノールは次回の燃料づくりのためのメトキサイドを用意する前に、新のメタノールと混ぜて適量を計量する。

手づくりバイオ燃料の品質

いくらタフと言われるディーゼルエンジンでも、やはりきちんとした燃料でないと調子がでない。中途半端に手抜きして作ったバイオディーゼル燃料で、愛車がいつまでも快適に走り続けてくれると期待するのは無理というもの。エンジンにとっての敵はグリセリン、出来損ないのバイオディーゼル、そしてアルカリ触媒。グリセリンやモノグリセリド、ジグリセリド、それからトリグリセリドなどエステル交換が完了していない物が残っていると、インジェクターの先端やバルブ・ヘッドでガムみたいな固まりが溜まってしまう。アルカリ触媒が残っていたらインジェクター・ポンプを損傷していまう。そんなトラブルになるよりも、きちんとしたバイオ燃料を作るためのポイントは硫酸や苛性ソーダ、メタノールなどに純粋な劣化していない物を使うこと。原料や薬品を正確に計量すること。それからこれが大切--ここに紹介した手順を一つ一つ忠実にこなして横着や我流に走らないこと。こうしてきちんとエステル交換したバイオディーゼルを作り上げたら、今度は丁寧に水洗いすれば残っていたアルカリ触媒を中和してグリセリンなど不純物を洗い流すことができる。

特別な知識や技術を持たない素人でも、石油大企業より優れた燃料を作ることができるのだから。それなら横着しないで丁寧に作ってみない?

バイオ燃料の品質チェックに使えるキットもいくつかあるらしい。車関係者がモーター・オイルに含まれるグリコールを調べるテストがあるって、サイトを見た人からメールをもらったことがある。これで調べたらバイオディーゼル燃料にグリセリンが残っているかどうかをチェックできると思う。

「モーター・オイルにエチレン・グリコールが含まれるかどうかを調べるテスト・キットをバイオディーゼル燃料のグリセリン残留を調べるのに使えると思う。このテストは簡単で、グリセリンが一定量以上含まれていると紫色になる。これでモーター・オイルを調べる代わりにバイオディーゼル燃料を調べたら。中古車業界はクーリング部分から漏れがないかを調べるためにこのテストを使っている。このテストならグリコールでもグリセロール(グリセリン)でも同じ結果を出すから」(Martin Reaneyに感謝!)

紙や薄い層で調べるクロマトグラフィーができれば、エステル交換の度合いを調べることができる。できあがったバイオディーゼルを滴定すればアルカリ触媒の残留を調べることができると思う。

バイオディーゼル燃料を使うときの確認事項も参照。)

アレックス・カック
スロヴェニア国 リュブリャーナ在住

ゥ Copyright Aleksander Kac, 2001. Patents pending. This is a proprietory process. This material may be copied and distributed for non-commercial education purposes only, as long as the source of the material is stated and a reference to this website URL is included:
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