手づくりバイオディーゼル燃料の作り方
アレックス・カックの「2段階 アルカリ-アルカリ方式」
ウェッブマスターより
多くの草の根バイオディーゼラーたちがこの方法でバイオディーゼル燃料作りに挑戦し、大成功だと報告してくれている。アレックスはさらに改良を重ね、新しい草の根バイオディーゼル燃料作りの技術を開発した(アレックス・カックの「2段階 酸-アルカリ『Foolproof』方式)。
アレックス・カック著
はじめに
世界中のあちこちで多くの人たちが廃食用油からディーゼル燃料を自分で作り、人にも車にも環境にもハッピーな燃料作りに成功している。インターネットにはバイオディーゼル燃料作りに関する資料が山ほど、それも質の高い情報の多くが無料で提供されている。
僕がこれから紹介するのは、寒い季節にも燃料の中でワックスが固まったり、イグニッションを詰まらせたりしない、より純粋なバイオディーゼル燃料を作る方法。
自分で燃料を手作りする、草の根バイオディーゼラーなら必ずといっていいほど「マイク・ペリーのバイオディーゼル・レセピ」のページを参照していると思う(まだ見たことがない人は、すぐチェック!) マイクは廃食用油がバイオディーゼル燃料に変身する過程をわかりやすく説明し、初心者でもそれなりの燃料が出来る作り方を教えてくれている。
初めは僕もマイクのレセピにそってバイオディーゼル燃料を作ってみた。でも、完成品にイマイチ満足できなかった。僕は化学技術者だから、化学反応の前後の成分計算をしてみた。わずかな量のグリセリンがどこかで消滅している。大した量じゃないけど、技術者としては見逃せない。僕は何度もマイクのレセピを読み返し、何度も計量をし直し、しまいには作った燃料を試すためにディーゼル車を1台購入して、どこがおかしいのか研究を続けた。
「手づくり企画のバイオ燃料メーリングリスト」には、自分でバイオディーゼル燃料を作って使っている人たちが世界中から大勢参加しているけれど、この「消えたグリセリン」に関する発言は一つもなかった。僕の計算が間違っていたのかな? 単に石鹸分も燃料と一緒に給油しちゃっただけかも。そう思いながら僕は作ったバイオディーゼル燃料を買ったばかりの中古ジープに給油してドライブにでかけた。エンジンも燃料ポンプも詰まらず、排気口からは「てんぷらの香り」が漂ってきた。すっかり嬉しくなり、僕はまたバイオディーゼル燃料を作り車を走らせ続けた。
だけど、しばらく後の寒い朝、エンジンから変な音がするのに気が付いた。やっぱり、どこかおかしい。原因追及に乗り出したとき、カメロ・ホロチェック氏のメールに気がついた。ホロチェック氏はバイオディーゼル燃料の連続製造法で有名な人物。彼がヒントをくれた。
化学理論的には
学校で化学を習ったとき、化学反応の「平衡」って勉強したと思う。例えば下のような化学反応の場合、
A+B -> C+D
A+B <- C+D
一方方向にしか変化できない化学反応もあるけれど、その他の化学反応は逆転することができる。バイオディーゼル燃料を作るときの化学反応であるエステル交換もこのタイプ。反応物と製品が平衡点に達したとき、化学反応はストップする。平衡点でエステル交換が止まってしまったら、できあがりは廃食用油と遊離脂肪酸メチルエステル (fatty acid methyl ester)の混合物になってしまう。しかもバイオディーゼルはすぐれた溶媒だから廃食用油を溶かし込むため、この二つの液体を分離させることは難しい。無改造のディーゼルエンジンに廃食用油そのままを使うと問題だ。どうしたら良いか?
改良方法
まず、バイオディーゼル燃料作りの化学反応を、上の反応式に当てはめてみよう。
A(廃食用油)+B(メタノール)->C(バイオディーゼル)+D(グリセリン)
この化学反応において、CとDへの変換を促進し、廃食用油を全部完全にエステル交換させる方法として二つ考えられる。
- メタノールをもっと大量に加える
- 必要ない副産物のグリセリンを撤回する
1)の方法は、膨大な量のメタノールを加えなければ効果が期待できない。これでは手づくり燃料の材料コストがかさんでしまう。2)のグリセリンを撤回する方法だと、同じ材料費でエステル交換される廃食用油の量が増えるからお得になる。だけど化学反応の途中にバイオディーゼル燃料からグリセリンを分離するには、液体遠心分離機のような大がかりな装置が必要。とても個人でできることじゃない。そう思ってあきらめかけていたとき、ホロチェック氏が簡単な解決策をアドバイスしてくれた。プロセスを2段階に分ければいいんだ!
2段階プロセス
マイク・ペリーによるバイオディーゼル燃料の作り方をまとめてみよう。
- 滴定して触媒の量を割り出す
- 廃食用油を暖める
- ナトリウムメトキサイドを用意する
- 廃食用油とナトリウムメトキサイドを混ぜる
- 数時間静置し、分離したグリセリンを取り除く
- 洗浄して乾燥させる
僕が改良した2段階プロセスの特徴は、1)滴定が必要ない。2)グリセリンを取り除いた後に、もう1回ナトリウムメトキサイドと廃食用油を混ぜること。 なぜ滴定が必要ないのか? 廃食用油のような複雑な物質相手に滴定で正確な触媒の量を割り出すのは極めて難しい。新しい指示薬を使って2〜3度繰り返しても誤差がでることがある。僕は実験の積み重ねから、廃食用油1リットルをエステル交換させるために必要な触媒 水酸化ナトリウム(NaOH)の量は約6.25 g と割り出した。2段階プロセスになっても、追加の機材は必要ない。時間が少しかかるだけ。実際の方法は下の通り。
警告!!!
燃料作りの作業中は、適切な化学実験用防護手袋、防護エプロン、防護眼鏡を装着すること。作業場は充分に換気し、発生した蒸気は絶対吸い込まないこと。メタノールは飲み込まなくても皮膚から吸収され盲目や死をもたらす恐れがあります。水酸化ナトリウムは重度の火傷や死をもたらす恐れがあります。この2つの物質を混ぜたナトリウムメトキサイドは非常に腐食性のある化学物質です。万が一のときに薬品を洗い流すため、流水を近くに用意しておくこと。小さな子供やペットを作業場に入れないこと。化学物質は危険物としてそれなりの取扱いをしてください。
まずは第1段階
1. 原料の廃食用油を計量し、反応槽に入れる(お手製の反応槽で充分)
2. 廃食用油の容量比25%の純粋メタノールと、廃食用油1リットルあたり6.25gの水酸化ナトリウム(苛性ソーダ NaOH)を混ぜ、ナトリウムメトキサイドを用意する。
3. 廃食用油を摂氏48〜52度に暖める。
4. 用意したナトリウムメトキサイドの4分の3を暖めた廃食用油に加える。(残り4分の1のナトリウムメトキサイドは密閉容器に入れ、子供や火の気の届かないところに置いておく。もしくは、2段階プロセスのそれぞれで必要な量を計算して、必要なナトリウムメトキサイドを1回ずつ作る)
5. 廃食用油の温度を48〜52度に保ったまま、50〜60分間かき混ぜる。
6. 化学反応が終わった混合物を12時間、静置する。
7. グリセリンを遊離脂肪酸メチルエステルから取り除く。この時点でグリセリンはサラサラの薄い液体状のはず。
続いて第2段階
8. 第1段階でできた遊離脂肪酸メチルエステルを反応槽に戻す
9. 48〜52度に暖める。
10. 残しておいた4分の1の量のナトリウムメトキサイドを加える。
11. 温度を48〜52度に保ったまま、50〜60分間かき混ぜる
12. 化学反応が終わった混合物を12時間静置する。
13. グリセリンを取り除く。今度はグリセリンがゼリー状にドロッとしているはず。このグリセリンの上に、分厚いクリーム色のワックスの層ができていると思う。このワックスこそが車の燃料インジェクターを詰まらせる犯人。すみやかに取り除く。
14. できあがったバイオディーゼル燃料を洗浄し乾かす。どんな方法でもかまわないけれど、アイダホの泡洗浄がお勧め。
アイダホ大学の泡洗浄法
手作り燃料を洗うことは非常に重要なため、ここで効果的な燃料洗浄方法を紹介したい。このページの方法で作ったバイオディーゼル燃料は、適切な方法でしっかり洗浄するまで絶対に車を稼働させないこと(洗うのは燃料。車は洗わなくてもいい)。洗わないままの燃料は非常に腐食性があるため、高圧燃料ポンプを破損するおそれがある。
手づくりバイオディーゼル燃料を洗うために用意するもの:
- 大きなプラスチック容器(反応槽の2倍くらいの容量のもの)
- 熱帯魚用のエアーポンプ(安物でもいいけど、空気量が多いもの)
- 大きめのエアーストーンとそれを繋ぐゴムホース
- pHメーターかpH試験紙など(pH値の半分まで測定できるもの)
pHについて
pH(ペーハー)について少し復習。pHの値は0から14まであり、その物質がどれくらい酸性か・アルカリ性かを示す。pH7が中性で、pH7より少ない値は数字が少なくなるほど強度の酸性、pH7より大きい値は数字が大きくなるほど強度のアルカリ性を示す。だけどpHの値は液体の全体容量とは関係ない。
第2段階を終えたばかりの手づくりバイオディーゼル燃料は余分な水酸化ナトリウムを含んでいるため、pHの値は7より大きいアルカリ性のはず。これを中和するため、例えばpH9(中性7より2大きい)の液体が10リットルあった場合、これをpH5(中性7より2小さい)の液体10リットルと混ぜ合わせたら、混合液体のpHは7と中性になる。バイオディーゼル燃料を洗浄するときにこれを利用する。
洗浄方法
まず、これから洗うバイオディーゼル燃料のpHを測定する。 燃料のpHを計るときは、メーターが正確な値を定めるまで水溶液より長く時間がかかるから慌てないで。測定したpHの値をメモしておく。
洗浄槽を用意する。浴槽の半分くらいを水で満たす(つまり洗う燃料と同じ量の水を入れる)。洗う燃料と水の温度は、ほぼ同じ温度(常温)であること。
pHメーターの電極を洗って乾かし、洗浄槽の中の水に浸け、洗浄するバイオディーゼル燃料のpH値が7を超えた分だけ、水のpH値が7を下るまで強い酢酸(お酢)を加える。
つまり、例えば洗浄したいバイオディーゼル燃料のpH値が8.7(7+1.7)だった場合、洗浄する水のpH値が5.3(7-1.7)になるまで酢酸を加える。酢酸は少しずつ加えながら、木製のスプーンなどでよく混ぜて。
適切な酸度の水が用意されたら手作りバイオディーゼル燃料を注ぎ込み、エアーストーンを入れてエアーポンプを稼働する。ブクブクと泡立ち、泡と一緒に酸性水の膜がバイオディーゼル燃料の中を上り、表面で弾けとばされた酸性水は燃料の中をゆっくり沈みながら、水が石鹸分と余分なメタノールを洗い流し、酸は残っていた水酸化ナトリウムを中和する。
こうやって最低6時間はブクブクと泡洗浄を続ける。エアーポンプを止めた後、12時間ほど静置する。白く濁った水が下にたまり、その上に色が薄くなったバイオディーゼル燃料が分離される。水が混ざらないように注意しながら、そっと燃料だけを取り出す。透明のチューブで吸い取るか、洗浄槽の底の方にバルブを取り付けてもOK。とにかく分離した燃料だけを静かに取り出すこと。
洗い終わったバイオディーゼル燃料を摂氏100度まで加熱し、水蒸気の泡が出てこなくなるまで加熱を続ける。燃料中に残っている水分を蒸発させて取り除くため。できあがったバイオディーゼル燃料のpH値を測定し、7 +/- 0.25になっていたら大成功。冷ました燃料をフィルターで濾過して車の燃料タンクに注ぎ込み、てんぷら臭を振りまきながら、さあドライブに出発!
もっと詳しくは最後の仕上げは泡で洗うへ。
まとめ
この方法で作ったバイオディーゼル燃料を、僕は自分のジープ チェロキー 2.1リットル ターボディーゼルでしっかりテストした。このバイオディーゼル燃料は従来の方法で作ったバイオディーゼル燃料より調子良く、快適なエンジン音からも石油ディーゼル(軽油)よりずっと良いことがわかる。冬になる前に、僕は燃料フィルタを新しくして小さなヒーターを取り付ける予定。これでどんなに寒くなっても燃料系統が詰まることはないはずだ。
スロヴェニアの冬は厳しい。外では霧雨が降り、寒くなってきた。僕はスコッチ・ウィスキーを啜り、膝上の猫をなでながら春のドライブ計画に思いを巡らせている。そのうち世界のどこかで会えるといいね。ヒマワリ畑のほとりとかで。
みんなのバイオ燃料作りが成功することを祈りつつ。
アレックス・カック
スロヴェニア国 リュブリャーナ在住
謝辞:
フィードバックより
この作り方を公表した後、ドロドロ石鹸ができてしまったというフィードバックをかなり受け取った。失敗の原因は水分。この化学反応の中にほんのわずかでも水分が含まれていたら、水酸化ナトリウムは燃料ではなく石鹸を作ってしまう。原料・材料・用具すべてから水分を取り除くこと! 水酸化ナトリウムを多めに加えた方が、エステル交換を促し反応が早く終わるから僕は6.25 gという量を割り出したけれど、これは絶対的な水酸化ナトリウムの必要量ではない。廃食用油1リットルあたりの水酸化ナトリウムの量を6.00 gにして試してみると良いかも。もしくは下準備として廃食用油を加熱して水分をとばしておく。
(c) アレックス・カック 2000
スペイン語で紹介されたアレックスの2段階プロセス「Proceso de biodiesel en dos etapas」
http://eureka.ya.com/energiaweb/aleks.htm
コメント
アレックスが初めてバイオディーゼル作りに挑戦し「手づくり企画のバイオ燃料メーリングリスト」に報告してくれたころ、アレックスは廃食用油から作ったバイオディーゼルが子猫のゲロみたいに臭くてしょうがないと、他のバイオディーゼラーにアドバイスを求めていた。でも彼のその後の上達は目覚ましく、アレックスは今、世界のバイオディーゼル燃料手作り運動を率いる先駆者になっている。アレックスがこの2段階プロセスを投稿したのは、彼が初めてバイオディーゼル燃料を作ってから5カ月もたっていない時。引き続きめざましい発展を期待している。がんばれ、アレックス!
by キース・アディソン
ジョシュア・ティッケル
「ヴェジ・ヴァン」
http://www.veggievan.org/
ENERGEAのカメロ・ホロチェック氏 次世代のバイオディーゼル燃料製造技術:連続エステル交換反応技術(CTER: Continuous Trans Esterification Reactor)はバイオディーゼル燃料生産の新しい幕を開けた。初期投資が最大50%減、完成品引き渡しの装置はコンテナほどの大きさ。植物油から動物脂肪までさまざまな原料に対応。生産性は最大30,000 mt/a。燃料品質 (E DIN 51 606, future CEN-standard)。
連絡先:Camillo Holecek camillo.holecek@donauwind.at
http://www.energea.at/en_info.html
手づくり企画の「バイオ燃料メーリングリスト(biofueljp)」
英語で2000年から開設されていたジャーニー・トゥ・フォーエバーの「バイオ燃料メーリングリスト」および「バイオ燃料ビジネスメーリングリスト」では、世界中から参加した3,000人以上の草の根バイオディーゼラーや専門家、学識者、企業家たちが、誰もがどこでも特別な機械がなくてもバイオ燃料を手づくりできる方法を一緒に開発してきました。日本でも草の根バイオ燃料を広めるために、日本語で情報交換や燃料づくりの協力ができるディスカッションの場を設置しました。ぜひご参加ください。
リストURL:http://groups.yahoo.co.jp/group/biofueljp/
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