ミミズコンポスト:手づくり企画「ジャーニー・トゥ・フォーエバー」



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ミミズコンポスト

「栄養たっぷりの表土を私でも作ることができるの?」
「もちろんだよ」
「どうすればできるの?」
「ミミズに餌をやればいいのさ」
-- "Harnessing the Earthworm" by Dr. Thomas J. Barrett, 1947

ミミズコンポストとはミミズに手伝ってもらって有機ゴミから栄養たっぷりの腐植土を作る方法。台所の生ゴミをコンポストするのに一番適した方法だと思う。庭や畑の堆肥塚に毎日ちょびっとずつ濡れた生ゴミを加えていくと、せっかく堆肥が熟成しようとしているプロセスを邪魔してしまう。でもミミズコンポストなら「毎日ちょびっとずつ」の方が生ゴミを食べるミミズのお腹具合にもピッタリ。

ミミズコンポストの適用範囲は広い。ミミズで畑から出る大量の有機物をコンポストする農家の人もいるし、堆肥塚とミミズコンポストを組み合わせて活用している農家の人もたくさんいる。畑や庭がない一般家庭の台所では、かわいらしいミミズ箱が生ゴミをどんどん食べてくれる。新聞紙や段ボールも食べてくれるから可燃ゴミの量をぐっと減らし、同時に植木鉢や箱庭菜園で栄養たっぷりの野菜を栽培するための肥料と土を作ってくれる。

1941年にジョージ・シェフィールド・オリバー氏が書いた『ミミズは友だち 世界で一番重要な動物の活用法に関する研究』はミミズコンポストの古典書の一冊。オリバー博士は農家や園芸家のために、ミミズを使って肥沃な耕土を作り、鶏や家禽類を育てる高品質のタンパク質飼料を安く生産する方法を開発した先駆者の一人だ。オリバー博士は経済的に厳しい農家のために、ミミズを活用して農作業と養鶏のコストと手間を引き下げるシンプルかつ効率的なシステムを考え出した。自然の法則を注意深く観察する目を持った博士だからこそ成し遂げることができた業績は、半世紀後の現在にも充分活かせる(というか今こそ見直したい)知識と技術を残している。全文オンラインで「ジャーニー・トゥ・フォーエバーの小さな農場図書館」に掲載しているので是非読んでみて。「小さな農場図書館」には他にもオリバー博士がおじいさんのミミズ農場について語った「My Grandfather's Earthworm Farm」や、有機農業運動に貢献したイブ・バルファー女史とアルバート・ハワード氏によるミミズ論「Eve Balfour on Earthworms」「Albert Howard on Earthworms」、そしてロイ・ハーテンスタイン氏による「The Housefly」も掲載している。

ミミズコンポストと作物


ミミズの糞=最高の腐植土!
できあがったミミズコンポストにはミミズの糞と分解された有機物が含まれている。快適な環境を用意してあげれば、ミミズたちは一日に自分の体重と同じ量(もしくはそれ以上)の生ゴミを食べてくれる。「食べる」というのはおかしいかも知れない。ミミズは土と一緒に有機ゴミを飲み込んでその中にいる微生物たちから栄養を吸収しているけれども、ミミズが「食べた」後の糞には微生物が食べる前より8倍にも増えている! しかもミミズの糞に含まれる微生物は作物の成長を助けたり、土の中の栄養分を作物の根が吸収しやすいように調整したりするもの。病原菌はミミズがお腹の中で消化してくれるからミミズ糞には病原菌が含まれていない。だからミミズコンポストは重宝されている。



ヒユで栽培実験。左から化学肥料、馬の糞、ミミズコンポストを加えた物。一番右の鉢には何も加えていない。
ミミズの糞には普通の土より窒素分が5倍、リンが7倍、カリウムが11倍多く含まれている。作物の成長を促す3大養分といわれる成分だけれども、それ以上に作物の成長を助ける大量の微生物たちも豊富。ミミズの糞にはフミン酸(腐植酸)という土壌の状態を調整する物質も多く含まれており、pHはちょうど中和されており、植物の成長を促す成分も含まれている。野菜や花にあげたら大喜びされる物ばかり!

ミミズ糞の効力は中村好男著『ミミズと土と有機農業』の第2章「ミミズの五つの有用なはたらき」に詳しく説明してある。これを読むと、ミミズはなんて貴重な生き物なんだろうと感心してしまうくらい。

「地球上のすべての肥沃土は最低1回はミミズの体内を通過している」 -- チャールズ・ダーウィン『ミミズの作用による肥沃土の形成およびミミズの習性の観察』1881年

ミミズの種類

じゃあミミズコンポストを始めよう! と意気込んで畑からミミズを掘り出してきても、このミミズたちは思うように生ゴミをコンポストしてくれない。生ゴミを一番効率的にコンポストしてくれるのは「シマミミズ」と呼ばれる種類のミミズたち(英語ではred worms, tiger worms, brandlings, angle worms, manure worms, red wrigglersと呼ばれる)。シマミミズは家畜が糞をばらまく牧場や堆肥塚の下など有機物が積み重なった地面の上の方にいることが多い。

ミミズコンポストには特に Eisenia foetidaLumbricus rubellas という2種類のミミズが最も効率的だとよく使われている。日本でも専門の業者から通販で買うことができる。中には「最も効果的にコンポストする特別品種」とか「コンポスト用に交配されたハイブリッド・ミミズ」なんて宣伝もあるかもしれないけれど、 Eisenia foetidaLumbricus rubellas は昔からいる自然の品種。ミミズコンポストで失敗しないためには、宣伝文句に惑わされずこのどちらかの品種であることを確認すること。

ミミズコンポストを始めるには、ミミズ1,000匹(約500グラム)くらいから始めるのがお勧め。庭や畑の有機ゴミも加えたいのなら、倍の1キログラムくらい欲しい。ミミズはぐんぐん繁殖してくれるけど、多めに始めた方が失敗しない。ミミズが多すぎても困ることはないから(下参照)。

増殖するミミズたち

ミミズの人口(?)は1カ月で倍になる。ミミズにとって快適な環境であれば、1,000匹のミミズが1年間に1,000,000匹まで増えるかも! でも実際はエサの量によってミミズの方が仲間数を調整してくれるし、コンポストを収穫するときに卵や子ミミズも混ざってしまうから、1年間でせいぜい増えて35倍くらい。ミミズを増やしたいかどうかは、飼い方や収穫の仕方で調整できる。

成人(?)のシマミミズは1週間に2〜3個の卵カプセルを産み落とし、3週間くらい後にカプセル1個から2〜3匹の赤ちゃんミミズが生まれてくる。ミミズの赤ちゃんは2センチくらいの白い糸みたいだけれど、ぐんぐん成長して4〜6週間後には親になって卵カプセルを産み始める。つまりミミズは3カ月でおじいちゃん&おばあちゃんになってしまう!

世代交代が速いため、ミミズは環境に適応しやすい。エサの種類や量、ミミズ箱の温度や湿度や住環境によって、ミミズは仲間数を調整して自分たちの周りに糞が増えすぎないように気を付けている。ミミズの糞は排泄した本人たちにとって少し毒素を持っているため、糞の密度が高くなりすぎるとミミズは箱を逃げ出すか、逃げ出せなかったら中で全滅してしまう。

このため、増やしたいのはミミズか、糞か。その目的によってミミズの飼い方が違ってくる。肥料のために糞がたくさん欲しい場合は、新しいミミズ箱を始めるのに必要な量のミミズだけを取り出し、残りのミミズは犠牲にして箱の中を糞一杯にしてもらった方が純度の高い糞を大量に収穫できる。この方が簡単かつ効率的。

だけどミミズコンポストを拡張したり、釣りのエサや鶏や魚の飼料(大好物!)にするために、ミミズ本体も増やしたい場合は、箱の中が糞だらけになる前にできあがったコンポストの山からミミズを取り除く作業が必要になる。下の「収穫のしかた」を参照。

目的はどれ?

  • 畑や花壇の肥料・腐植土のためにミミズ糞を生産したい
  • ミミズ糞が欲しいけど、ミミズ本体も増やしたい
  • 鶏や魚のエサのためにミミズ本体を増やしたい。糞は副産物
  • 生ゴミを処理するのが目的。ミミズや糞は副産物
  • 子どもたちの教育目的

ミミズ箱

ここでは一般家庭の台所で生ゴミを食べてもらうミミズコンポストの話をするので、畑や庭の有機ゴミをコンポストしたい人は下の「農家用のミミズ箱」を見て。


レルン社のキャノワーム
オーストラリアやアメリカの会社からCan-O-Worms, Worm Factory, Worm-a-way, Eliminator, Worm-A-Roo, Tiger Wormeryなど、いろんな種類のミミズコンポスト専用容器が販売されている。詳しくは「ミミズコンポスト資料集」を参照。

だけどミミズコンポストの容器(ミミズ箱)は身近な材料から自分で簡単に作ることができる。実際プラスチック製の市販品より、木材やリサイクル品を使ってミミズ箱を手作りすることをお勧めする人が多い。特に木材のミミズ箱の方が容器自体が「息」して空気や水分を通してくれるから。

ミミズ箱の大きさ

ミミズ箱の大きさは、食べてもらう生ゴミの量によって決める。

1人か2人世帯ではだいたい1週間に1.8キロくらいの生ゴミが出るから、 60cm x 60cm x 深さ20cmくらいの箱がお勧め。3人世帯なら深さを30cmに、それ以上だったら60cm x 90cm x 深さ30cmにするか、もしくは2人用箱を2箱用意する。あまり箱を大きくすると重くて扱いにくくなるから、4人以上になったら2箱に分けた方が良いかもしれない。

材料は安いベニヤ板でいいけど、薬品処理されていない物を選ぶ。木材に防虫剤などの薬品がかかっているとミミズたちにも悪影響してしまうので、天然の木材に植物油か亜麻仁油を自分で塗った方がよい(バイオディーゼルなら最高!)。釘はさびない物を。通気性のため箱の底にドリルで直径1〜1.5センチくらいの穴を少なくとも12個以上空ける。同じく通気性のため箱に足をつけて、箱の底が床から数センチ高くなるようにする。箱から汁がでるため、箱より大きめのトレイを下に敷く。

箱にミミズと詰め物と生ゴミを加えた後は、上に黒いゴミ袋を箱より一回り小さく切ったような物をかぶせる。ビニールが水分を逃がさないし、黒い覆いをするとミミズたちの活動範囲が表面すれすれまで広がる。もし水分が多すぎてびしょびしょになるようだったら、ゴミ袋の代わりに新聞紙を数枚重ねて使う。箱には蓋を閉めて虫やハエが入らないようにする。これを台所かベランダのどこか便利なところに置く。

ミミズのベッド(詰め物)

箱の中でミミズが這い回ったり生ゴミを引きずり込んだりするために湿った詰め物で埋めてあげる。60cm x 60cm x 深さ20cmの箱なら詰め物を1.8〜2.7 キログラムほど用意する。ミミズは生ゴミと一緒に詰め物も食べてしまうため、ときどき詰め物も追加してあげる。

ミミズ箱に詰め物を加えているところ (Greater Vancouver Regional District)
適度な水分と通気性を保つことができ毒性がなくてふわふわした物なら、大抵の物をミミズ箱の詰め物に使える。まだ新しい家畜の糞やアルファルファの草など湿らせると急速に腐敗して発熱する物は避けること(ミミズは熱に弱い)。何種類かの材料を混ぜた詰め物の方がミミズは喜ぶかも知れないけれど、気が向かなければそこまで手間をかけなくてもいいと思う。段ボールの切れ端を3分の2にピートモスを3分の1混ぜた物とか、ピートモスと細かく裁断した葉とおが屑とか、もしくは段ボールや新聞紙だけでもOK。

それぞれの詰め物をこんな感じに用意する。

  • 段ボール箱 1〜2センチ幅の断片に切って使う。保温用に使われる段ボール片には化学薬品で処理されている物もあるから気を付けて。薬品の入っていた段ボール箱も避けたい。
  • 新聞紙 2〜3センチ幅の帯にちぎる。黒インクは(多分)大丈夫だけど、カラーインクのページは使わない。新聞紙だけだと湿らしたときに固まりになってしまうので、他の詰め物と混ぜて使う。
  • シュレッダーにかけた紙。ただしコピー用紙などトナー印刷されたものは有害なため避ける。
  • 落ち葉 シュレッダーにかけたり車で挽いたりして細かくした物。もしくは湿らせた落ち葉に石灰や草木灰をまぜて一緒にゴミ袋にいれて数ヶ月おいた物。落ち葉そのままでも使えないことはないけれども分解するまでに時間がかかってしまうため、できれば細かくするか多少分解させたものの方がベター。
  • 完熟もしくは堆肥化した家畜の糞(牛、馬、ウサギなど)。熟してないものは使わない。
  • 水苔、ピートモス。カナダ製のものを使いたい(産地によってはミミズが嫌いな毒性を含む物があるので気を付ける)。水に24時間浸したものを搾り、石灰を少し振りかける。ピートモスだけだと酸性になりがちだから。
  • ココナツの繊維。市販されている物は大抵ブロック状なので鋸で小さく切って使うか、水に浸して戻した物を搾って使う。
  • 細かく切ったワラ、乾いた草、枯れた草など、茶色になるまで完全に古くなった植物
  • おが屑 あまり臭いのきつくない木材で薬品処理していない物。4分の1から3分の1以上は加えないこと

ミミズの消化を助けてあげるために、一握りの土か砂もミミズ箱に加える。石灰や石灰岩の粉や草木灰なども少し振りかけてあげると良い。

堆肥塚を積むときには材料を65%くらいに湿らすのがちょうど良い水加減だけれど、ミミズコンポストはもう少し多く75%まで水分を含んでも大丈夫。でも生ゴミは見た目によらず水分たっぷりなので、ミミズ箱の中があまりべとべとにならないように気を付けてあげて。ミミズは湿っている所は好きだけど、濡れている所は嫌いだから。

詰め物を細かく切って、混ぜて、湿らせて、準備完了したら箱に敷いてミミズを移し入れる。ミミズが新居に落ち着くまで、2〜3日はエサをやらずにそっとしておいてあげる。

生ゴミのエサの与え方

プラスチックの包装紙や袋・アルミホイル・サランラップなどはミミズ箱に入れない。ミミズが好きなのは野菜クズや果物の皮や芯、コーヒーかす(フィルターの紙も入れてOK)、ティーバック(小さいホチキスの芯は取る)、卵の殻(乾かして砕いてから。面倒だったら片手でクシャっとつぶすだけでも)、古くなったパン、鉢植えから切り取った葉や茎などなど。大きなものは細かく切ってあげる。柑橘類やタマネギ、ニンニクなど酸や刺激臭のキツイ物は加えない方が良いとアドバイスする人もいる。ちょびっとだけあげてみて、大丈夫そうだったらOK。植物性でも油は止める。よっぽど自信がない限り乳製品や肉や魚は加えない方が良い(悪臭の元)。汁物や大量の調理済み食品も止めた方がよいかも。

生ゴミは流しの三角コーナーで水浸しになる前に非難させ、蓋がついた小さなバケツか容器に溜めておき、いくらかまとまったところで1週間に1〜2回ミミズ箱に加えてあげるとよい。バケツ一杯の生ゴミを箱の片隅にまとめて埋める。次にバケツが一杯になったときは前回埋めた場所の隣に埋める。その次はその隣、その次は・・・と毎回お隣に埋めていくと30cm x 30cm の箱なら9回くらいで一巡することになる。そのころには1回目の生ゴミは姿を消しているから、そこに新しい生ゴミを埋める。

小さなミミズ箱にどれだけ大量の生ゴミをつぎ込むことができるか、きっとびっくりすると思う。ミミズと微生物たちは驚くほど大量のゴミを消化してくれるから。上手くいけば半年くらいは同じ箱に次々に生ゴミを継ぎ足していける。

生ゴミを埋めるときには三つ又の園芸用土かきが便利。

ミミズコンポストを収穫する

畑や鉢植えのために肥料と腐植土だけが欲しいのなら、一番簡単な方法でミミズの糞だけを収穫すればOK。ミミズコンポストを拡張したり鶏や魚のエサのためにミミズ本体も増やしたい場合は、ちょっと手間をかけて光分離法か金網法でミミズと糞の両方を収穫する。

ちょっと面倒 光で分離する方法

日の当たる屋外か100W電球の下のテーブルなど明るい所に、ビニールござもしくはゴミ袋を切り開いたシートなどを広げ、その上にミミズ箱の中身をぶち空ける。

ミミズの収穫風景。キースが手にしているのがミミズ本体。前にあるのが糞の山。

効率を上げるため中身を8つか9つの小山に分けて盛る。ミミズは光が嫌いだから、慌てて山の中に潜り込む。しばらく待ってミミズがいなくなった表面を小さなブラシで掃き取ってちり取りに受け取る。ミミズの頭が見え始めるまで、表面をうすーく軽く掃き取る感じ。全部の山の表面を一幕はぎ取ったら、しばらく待ってまた繰り返す。待っている間にミミズ箱に新しい詰め物を用意しておく。

こうやってミミズをだんだん山の奥に追い込みながら糞を収穫していくと、しまいにはミミズがお互いに相手の陰に隠れようと絡み合った団子状態になる。そうしたらミミズの固まりを新しく用意したミミズ箱に移して、新しいミミズ箱の生活を始める。


追いつめられた団子状態のミミズたち
この方法だと大量のコンポスト(ミミズの糞=栄養たっぷりの肥料&腐植土)に加えて大多数のミミズ本体が収穫できる。収穫したコンポストにはミミズの卵カプセルも混ざってしまうけど、これは仕方がない。生まれた赤ちゃんミミズは普通の土の中では死んでしまうけれど、ミミズ箱の中では救出されたミミズたちがそれ以上の卵カプセルを生んでくれるから問題ない。収穫したコンポストは1〜2週間ねかせてから土に加える。

ミミズが気持ち悪い? 子どもたちはへっちゃら。子どもに声をかけて手本を見せてあげたら、喜んでこの収穫作業を手伝ってくれるよ。そしらたラクチン!

手間を省く 横に移動させる方法

前もって準備すれば手間を省くことができる方法。ミミズ箱の中を2等分して、中身全部を一方に寄せる。空いた半分に新しい詰め物をいれ、その後は新しい側にしか生ゴミを加えない。こうするとミミズたちはエサを求めて古い半分から新しい半分に移住していくから、1〜2週間たつと古い半分にはコンポストだけが残されミミズたちはほとんど全部新しい半分に移っている。

ミミズ箱の真ん中に金網を設置してこの仕組みを恒常的に利用すると、ミミズも卵も失うことなく大量のコンポストを面倒なく収穫できる。真ん中に立てられた金網を挟み、まずA側に詰め物とミミズを入れて生ゴミを食べさせ、糞が増えたころに金網の反対側のB側で新しい詰め物とエサを与え始める。ミミズが移住し終わったころにA側の糞を回収し新しい詰め物を始める。その繰り返し。ただ必要な箱の面積が倍になるけれど。

もっと手間を省く 上に移動させる方法

ミミズが通り抜けられる編み目サイズの丈夫な網を用意する。湿気ても破れたり腐ったりしない物を選ぶ。この網を糞が多くなったミミズコンポストの上表面にピッタリかぶせる。網は箱の壁も覆って上にはみ出すくらいの大きさであること。設置した網の上に新しい詰め物を入れ、今後はここに生ゴミを与える。網より下がエサ不足で糞まみれになると、ミミズは網を通り抜けて上の方に移住してくる。

網の上のミミズコンポストもできあがってきたら、網ごとミミズもコンポストも生ゴミも持ち上げ、ひとまず脇に置いてミミズ箱を空にする。こうすると底に残されたミミズの糞だけ高い純度で収穫できる。

箱を空にしたら脇に置いておいた網の中身を箱の底に入れる。今度はその上に網を敷き直して、新しい詰め物と生ゴミを始める。網の上のミミズコンポストができあがってきたら、また網を持ち上げて底に残された糞を取り出す。その繰り返し。

この方法は網が丈夫で破れないことがポイント。詰め替えの途中で破れてしまうと元も子もないから。

手間を全然かけない方法

ミミズ本体を増やすことはできないけれど、一番手間をかけずに高純度のコンポストを収穫する方法がこれ。まずミミズ箱が満杯になるまで4ヶ月間ほど生ゴミを加え続ける。満杯になったころに第2のミミズ箱と新しい詰め物を用意し、古いミミズ箱から引っ張り出したミミズを加えて新しいミミズ箱を始める。古いミミズ箱の方はなにもしないで放っておく。箱の中のエサを食べ尽くしたミミズたちは糞だらけになって死んでしまう。ミミズの死体もすぐに微生物に食べられて姿を消し、数ヶ月たったころに箱を開けると黒々ときれいなミミズコンポストがぎっしり詰まって収穫できる。糞を収穫し終わった箱でまた新しくミミズコンポストを始め、今度は第2の箱を放置する。

新しいミミズ箱に充分な量のミミズを引っ張り出すことさえ忘れなければ、この方法だと純度の高いミミズコンポストを手間なく収穫できる。.

ふるいかけ

生ゴミや詰め物に分解しにくい物が混ざっている場合、収穫したミミズコンポストをふるいにかけた方がよい(気にならない様だったら無視していいけど)。ふるいは編み目5ミリくらいの園芸用の丸いふるいが使いやすい。ステンレスの方がさびないし、糞もくっつかないので作業がラク。

ふるいにかけると、残っていたミミズ本体を救出することもできる(卵カプセルや赤ちゃんミミズはあきらめだけど)。

やっかいごと

通常なら問題にならないはずだけど、時に発生してしまうのがハエと悪臭。普通ミミズ箱は臭いを発生しないし、完成したミミズコンポストは森の腐植土のなつかしい香りがする。ただ生ゴミを与えすぎたり箱の中の通気性が悪いと悪臭が漂い始める。危険信号が見えたら(臭ってきたら)生ゴミを加えるのを止め、乾いた詰め物を多めに加え、石灰を少しまぶし、箱の中身を土かきでほぐして空気を含ませる。水分と通気性の調整がポイント。

どんなに注意しても、多少のショウジョウバエがやって来てしまう。ハエも生ゴミを分解するのに一役かっているので多少は無視しておけば良いけれど、あんまり多く飛び回る場合は生ゴミの与えすぎ。生ゴミの量を減らして詰め物を増やし、表面を湿らせた新聞紙で覆って生ゴミが露出しないようにする。

多少の虫がいるかもしれないけれど、まあそれも自然の一環だからあまり神経質にならないこと。どうしてもイヤだったら、ミミズ箱をベランダか軒下などの雨のかからない屋外に出したり、子どもたちに世話してもらうのも手かも。

農家用のミミズ箱

庭の花壇や家庭菜園、農家の畑からでる野菜クズや剪定クズなどの有機ゴミも、ミミズに大稼働してもらってコンポスト化することができる。実際、オリバー博士のおじいさんは160エーカーの畑をミミズコンポストだけで60年間肥やし、人が羨むような立派な作物を育てていた。

一番簡単な方法は、地面を30センチほど掘り下げ、詰め物か完熟堆肥を20センチほど敷き詰めた上にミミズを移す。溝の幅は60センチくらいにして、長さは必要なだけのばす。コンポスト用のシマミミズは普通の土の中では生活できないから、せっかく投資したシマミミズが逃げてしまうことはない。庭や畑から有機ゴミが出るたびに、この溝に加え表面に土と石灰を少し振りかける。生ゴミは畑の有機ゴミで隠す様にして表面に露出しない。畑のゴミも今日はこっち、明日はあっちと、場所を移動しながら積み重ねていく。

まだ青々した畑の有機ゴミは分解される段階で熱くなることがあるけれど、これだけ場所があるところではミミズは熱を避けて逃げ、有機物が冷めてミミズたちにとっておいしく腐ったころに群がって食べてくれる。

モグラがいるところでは、ミミズコンポストの底に金網を埋めて防ぐ。

もしくは植物油か亜麻仁油を塗った幅45センチ x 長さ90センチの板4枚で木枠を作り、ブロックを並べた上に置いて大型のミミズ箱を作る方法もある。中に15センチくらいまで詰め物を敷き詰めてミミズを入れてやる。この箱の四隅に順番に有機ゴミや生ゴミを加えていく。根についた土はよく払い落として、大きな野菜クズはシャベルの先で切り裂いて。必要に応じて詰め物も加えてあげる。

詳しくは1941年にジョージ・シェフィールド・オリバー氏が書いた『ミミズは友だち 世界で一番重要な動物の活用法に関する研究』や「 小さな農場図書館」に掲載している参考文献を読んでみて。

有機農家で「土と健康オンライン図書館」を開設しているスティーブ・ソロモン氏は『有機農家のコンポスト』の中で、ゴミバケツを使った畑用ミミズコンポストの方法を紹介している。
http://www.soilandhealth.org/03sovereigntylibrary/
0302%20homestedlibrary/030202/03010200.html

ミミズコンポストを使う

ミミズコンポストは完熟堆肥と同じように、作物の根本に浅く鋤き込んだり定植前の畑に鋤き込んだりして使える。ミミズコンポストは通常の堆肥(好気性コンポスト)より倍くらい効力が強いから、使う量は半分くらいが目安かも。だけど畑によって状況が違うから一概には言えない。中にはミミズコンポストを畑の表面に15センチくらいばらまくだけで大きな成果を上げている人もいる。同じことをしても上手くいかなかった人も。

ミミズの糞には成長促進物質も含まれているため、種をまく育苗用の培土に使うのもピッタリ。

植木鉢やコンテナの箱庭菜園では、ミミズコンポストを4分の1くらい混ぜるのが適量と思うけど、これもそれぞれの状況で調整して。

ミミズ糞はそのまま使う他にも「コンポスト・ティー」を作って液肥として使うこともできる。水1リットルにミミズ糞を大さじ2杯の割合で混ぜ、ときどきかき混ぜながら1日おいておく。それを普通の水やりと同じ調子で作物に振りかけるとOK。ジョロだと目が詰まりそうだったら、ペットボトルのキャップにドリルで小さな穴を空けたリサイクル水差しが便利かも。

苗を定植したり株分けするときには、このミミズ糞コンポスト・ティーを根にスプレーしたり、苗をコンポスト・ティーに浸したりすると、移植のショックを和らげる効果もある(この目的には海草エキスも効果抜群)。

ミミズコンポストは乾燥させないこと。カラカラに乾いてしまうとせっかくの栄養分が失われ水も受け付けなくなる。ミミズコンポストを保存するときは密封しない入れ物で多少息ができる状態なら1年くらいはおいておける。

ミミズコンポストについての詳細は「ミミズコンポスト資料集」へ。


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