伝統農法の調査と開発プロジェクト キース・アディソン 香港ランタオ島大浪湾村 1983-85 |
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香港の中心街からフェリーで1時間。そこからランタオ島の古バスに揺られて1時間ほどの所に大浪湾(タイロンワン)という小さな村がある。キース・アディソンと写真家のクリスティーン・テリーの2人は1983年、この大浪湾村の小さな空き家を借りて村に移り住んだ。
1970年頃には約2万5000ヘクタールの水田で稲が栽培されていた香港でも、83年にかろうじて残っていた水田はたったの5ヘクタール。大浪湾村にはその内の2ヘクタールの田圃があった。 途上国で働く人たちが注目していた中国の伝統農法。それが消滅してしまう寸前の最後のチャンスを逃すまいと僕たちは大浪湾村へやって来た。同じ様な農法が営まれていた中国広東省は見違えるほど変わってしまったし、中国から台湾や東南アジアに伝わった農法は違う系統のもので、それも随分近代化されてしまっていた。 大浪湾村は時代から取り残された村だった。近代社会との接触は60年代まで無きに等しく、村にテレビが入っても生活の基本は清王朝の時代と同じだった。 村の農業は稲作が中心。伝統的な農耕技術はまだ留められていたけれど、すでに恐ろしいスピードで崩壊し始めていた。
1970年に約120人だった大浪湾村の人口は、83年には22人にまで減っていた。若者は都心に移り、村には老人と孫たちだけ。労働をになう若手がごっそり姿を消していた。 第三諸国の多くの農村が、同じような労働不足に悩んでいる。逆に人が集まってきた所では仕事と食糧不足で悩んでいる。 そのころ、途上国の開発に取り組んできた多くの人たちが、東南アジアや他の途上国の農村開発に適したモデルは近代農法ではなく、中国の伝統的な農法の方がふさわしいのではないかと、その農法に注目していた。
途上国の農民と農村が自立するための手段として、僕たちは中国の伝統農法や、その他の伝統農法をもっと知りたいと思った。開発問題に対する僕たちの視点はハッキリしている。 キーポイントは「だれの犠牲で、だれが利益を得ているか?」 伝統的な農法について知っていたこと。 伝統農法は地域内で再生産できる資源を地域内で活用し、高い生産性をあげることができる。外部からの高価な資源投入は必要ない。 ほとんどの伝統農法は地域の自然との調和を上手に保ったまま、人間が必要な物を生産することができる。 伝統農法は小規模なことが多い。意外に思う人が多いが、小規模な農家の方が大規模農場より大きな面積当たりの生産をあげることができると、世界中の調査結果が明らかにしている。たとえば世界銀行の報告によると、インドでは30%増、タイでは60%増、ラテンアメリカでは3〜14倍、小規模農業の方が高い生産性を上げている。 (World Bank, The Assault on World Poverty -- Problems of Rural Development, Education, and Health, Johns Hopkins University Press, Baltimore, 1975)
伝統的な技術は柔軟性も高いため、いろんな地域やいろんな状況に適応しやすい。伝統的なしくみは、地域内の資源を最大限に活用し、地域に職を生み出すこともできれば、逆に労働力が足りなくても収穫をあげることもできる。1970年代、伝統的な野菜栽培1ヘクタールに必要な労働力は香港で4.5人、タイでは3人、マレーシアでは4.3人、フィリピンでは3〜8人だった。一方、中国南部の集団農場では1ヘクタールで21人が働いていた。 こう考えて、僕とクリスティーンは大浪湾村に学びに来た。 |
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(c) Keith Addison and Midori Hiraga
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